新潟の親子遭難事故の捜索行方が気になるところですが、なぜ見つからないのでしょうか。迷った時の行動にも原因があるかもしれません。山へ行くにあたり、助かった事例やいざというときの対応方法を知っておきましょう。
遭難事故の原因はほとんどは道迷いです。場所が分かっていても傷病などで動けなくなるという事故もあります。そして、理由はどうあれ、捜索費用は依頼者負担になるようです。最近は登山人気も高まり、シニアのみでなく、若者も気軽にハイキングなどに出かけたりしますが、万一の場合は大変なことになりますので、対策を学んでおきましょう。
国内遭難、最大、最長事例はトウムラシ
戦後での最大級遭難事故といえば、トウムラシ遭難事故だと思われます。
トウムラシは、北海道中央部の2141mの山です。
冬は危険すぎるのはもちろんですが、この事故は真夏、2009年7月16日に発生しました。しかも、プロのツアーガイドを含む登山者8人が死亡するという夏山の悲劇です。
ただ、ガイド3人のうち2人はそのコースは初めてでした。参加者や50-60代が15人で、旭岳ロープウェイを起点とする2泊3日の縦走計画でした。
天候が悪く、参加者も経験者とはいえ、高齢で、ガイド同士のコミュニケーションもない中日程を強行した結果、約半数が低体温症による凍死をとげました。
遭難事故での低体温症予防法、道に迷ったら
この事故の調査結果によると、原因としては、
- 悪天候の中のツアー強行
- 力量判断の問題
- 防寒対策の不足
- 低体温症などについての無知
などが挙げられています。無理をしないというのは当たり前のようですが判断ミスをしてしまうことがあるようです。夏なら防寒具はいらないわけではないのです。
低体温症は、
- エネルギー不足
- 水濡れ
- 風
によって起こります。十分な食料と休息、防寒具や雨具を常に携行しましょう。ガイドがついているからといって安心ではありません。具合が悪いと思ったら山小屋に残るなどの判断も必要かもしれません。
悪天候や体力上の問題がなくとも、道に迷って遭難ということもあります。まずは基本として、
- 登山届を出す
- 地図とコンパスを持っておく
- 笛など、救難を知らせるものをもつ
ことが必要です。迷った人の体験談によりますと、「気が付いたら登山道を外れていた」「斜面を進むよりトラバース(横切る近道)しようと思った」ということがあるようです。
トラバース道とは、斜面を上に登っていくものではなく、横切るもので、稜線から外れ、見晴らしが悪くなりがちです。上にまっすぐ向かわないので緩やかに見えるのですが安全というわけではありません。
また、トラバース道といっても、整備された道ではなく、獣道のように何かが通ったことがある形跡だけだったりしますので、入り込むのはリスクがあります。
- 自信がなければ引き返す勇気をもつ
ことが必要です。
そして、迷ってしまった場合に大事なのが、
- 下へ降りてはいけない。登って稜線を目指す
ことが大切です。なんとか自力で下山しようと、下を目指してしまいがちですが、そうすると沢に滑り落ちたり、さらに奥深く迷ってしまう可能性が高いです。上を目指せば、そのうち見晴らしのよい稜線にでたり、山小屋があったり、正規の登山道に戻れる可能性があります。救助隊に見つけてもらえる可能性も上がります。
迷ったら上を目指してください。
奥秩父・両神山での遭難、14日後救助生存例
2010年、奥秩父の両神山で遭難、滑落して救助されて人の例もあります。
両神山は埼玉県のにある1723mの山で、東京から日帰りで行けなくはない百名山です。しかし、岩場などもあり、初心者向けではありません。
2010年8月盛夏のことです。30歳会社員の登山者多田さんは、秩父の百名山に登ると言い残し、日帰りの予定で家を出たまま戻りませんでした。テント、重装備、食料なしです。
さらに、
- 登山届を出さず、家族にどの山に登るか告げていない
- 20年前の地図を持っていった
ことが問題だったのでしょう。彼は下る際、登ってきた道とは違う道をとりたいと思い立ち、地図上で破線になっているルートを辿ります。
- 登山ルートを事前に十分検討していなかった
ということです。
その後迷ったように感じましたが、バスの時間を気にしていたので引き返さず下りてしまいます。すると、滑落してさらに下へ落ちてしましました。
- 急がなければならないほど行程に無理があった
ということですね。そして焦ったためか、滑って足を折ってしまい、動けなくなります。食料は飴玉数個のみで、救急道具なども持っていなかったので、シャツなどで縛り、その場で13夜を生き延びます。
捜索は場所が分からなかったため難航しましたが、家族の聞き込みでなんとか救助に至りました。個人の体力があった、運が強かったのもあるでしょう。事前準備が不足していたという事例だと思われます。
また、折れた足の傷にはウジなどがわいていたそうです。長い布や洗浄用の水は残しておきたいですね。
さらに、見つけてもらえるよう、救助笛など音の出るものや、発煙筒や火を起こせるもの、明るい布などもあるとよいですね。別のグループでは、ジャケットを張り出た枝に括り付けてから野営し、後日発見されたようです。
この方などは九死に一生を得ていますが、たとえ助かったしてもそのあとも大変です。
遭難時の救助費用は?大峰山系遭難体験談
生還したとしてもいたたまれないものです。学生たちの体験談によると、
10日ほどの捜索で400万円かかっているそうです。場合によってはもっとでしょうね。